10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
19章:変化と覚悟
その日、家に帰ってから私はまたせっせと料理を作っていて、作り終えたころ、ちょうどいいタイミングで大和先生が帰ってきた気配がした。
玄関まで迎えに行きたい気持ちと、昨日のことを思い出していけない気持ちがぶつかってキッチンで固まっていると、私が動くより先、先生がリビングに入ってくる。
「お、おかえりなさい」
「ただいま」
先生の顔をちらっと見ると、先生は、今日は普通に微笑んでいてほっとする。
昨日の先生は意地悪だった。怖かったはずなのに、胸の奥と身体がぎゅうとなる。
なにこれ……変なの。全部先生のせい。
いや……優しくされても、少し乱暴にされても、先生のことが好きな私のせいなのかな……。
「あの……ご飯食べます?」
「あぁ」
大和先生は頷くと、でも先にシャワー浴びてくるね、と微笑んだ。
バスルームから出てきた先生は上半身裸のままで、私は慌てて先生から目線を反らせる。
そんな私の様子に気づいたのか、先生がクスリと笑う声がした。
そのままラフなシャツを着て、先生がテーブルの上にある料理たちを見て言う。
「なんだか豪勢だね」
「……昨日、作ってたけど食べられなかったし」
そう、昨日のハンバーグもそのままだったので今日焼いて出した。そしてさらに今日はプラスで作って、確かに品数がどんどん増えているような状態だ。
私がつぶやくと、先生は私の頭を優しく撫でた。
「あぁ。すまないね」
「だから、今日はプラスで3品作って……」
「おいしそう。いただくよ」
先生が微笑んで、その笑みに思わず私まで嬉しくなって微笑む。
「はい! どうぞ!」