10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~

 先生は私を店の前に停めていたタクシーに押し込むと、自分も私の隣に乗り込む。

「タクシーで来てくださったんですか? ……すみません」
「車でもいいけど夜勤日勤明けだし、それで大事な果歩乗せるの怖いからね」

 先生は言って、目線を外に向ける。

「先生?」
「うん」
「あの……変です?」

 私がおずおずと聞くと、先生は困ったように私を見た。

「さっきも言ったでしょ。かわいいよ。すごくかわいい。かわいすぎて心配になるって」
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