10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
「すっ、好きなら、な、なんで最後までしてくれないんですか!」
「言ったでしょ。果歩が俺をもっと求めてからだって」
その言葉に思わず唇を噛んだ。
「私は……大和先生が思ってるより、先生のこと好きなの! 大好きなの! この服だって、髪だって、メイクだって……先生のために、先生がもっと私のこと好きになってくれるようにって思って、してもらったのに……! なのになんでそんな意地悪言うのよぉお?」
私は何言ってるんだろう。また子どもっぽい事言ってる。
泣いて駄々をこねて……こんなだから先生は最後までしようって思えないんだ……。
またぽろりと涙が溢れた次の瞬間、唇が重なってキスをされる。今度は優しくて、長いキスだった。
「んっ……」
先生は唇を離すと私の額に自分の額をつける。
「……果歩」
「先生?」
(やっぱり私じゃダメなんだろうか……)