10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~

「すっ、好きなら、な、なんで最後までしてくれないんですか!」
「言ったでしょ。果歩が俺をもっと求めてからだって」

 その言葉に思わず唇を噛んだ。

「私は……大和先生が思ってるより、先生のこと好きなの! 大好きなの! この服だって、髪だって、メイクだって……先生のために、先生がもっと私のこと好きになってくれるようにって思って、してもらったのに……! なのになんでそんな意地悪言うのよぉお?」

 私は何言ってるんだろう。また子どもっぽい事言ってる。
 泣いて駄々をこねて……こんなだから先生は最後までしようって思えないんだ……。

 またぽろりと涙が溢れた次の瞬間、唇が重なってキスをされる。今度は優しくて、長いキスだった。

「んっ……」

 先生は唇を離すと私の額に自分の額をつける。

「……果歩」
「先生?」

(やっぱり私じゃダメなんだろうか……)

< 173 / 333 >

この作品をシェア

pagetop