10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
病院に行って仕事をしていると、朝一で会った病院長には微笑まれ、『髪型変えたんだね。似合うね』とニコニコ言われて、そういう事かとほっとする。
私の中で、するまでの自分と、した後の自分が見える周りの景色が少し違って、これは他の人から見てもわかってしまうものなのだろうか、と思っていたのだ。
どうやらそれは思い過ごしのようで心底ほっとしていた。
お昼に食堂でご飯を食べていると、麻子さんがやってきて、目の前に座る。
「うっわ! 意外にすっごい食べるのね」
麻子さんが驚いたように私の目の前のトレーの上を見ていた。
私はその日、一番ボリュームの多いC定食にご飯を大盛りにしていた。土曜の夜からあまり食べていないせいで、おなかが減って仕方がないのだ。