10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
麻子さんを見て誤魔化すように笑うと、麻子さんは私の顔をじっと見る。なんだか全部見透かされそうで思わず目をそらしたとき、麻子さんは口を開いた。
「土曜日大丈夫だった?」
「はい」
「……もしかして、最後までした?」
はっきりとそう聞かれて、驚きのあまりご飯を噛まずにそのまま飲み込んでしまった。
「なっ、なんでわかるんですか! 超能力者ですか⁉」
ゲホゲホ咳ごむ私の背中を、麻子さんは苦笑しながらさすってくれた。
そして、私にお茶を差し出すと、また自分も席に着く。
「朝ね、大和先生とすれ違って、土曜の事、何か文句言われるかと思ってたけど、見たことないくらいの笑顔で『おはよう』って微笑まれたからさ。ナースステーションもざわついてたわよ」
「そ、そうなんですか……」
いいような、悪いような……ただただ、『そういうこと』が周りに知られるのは非常に恥ずかしい。