10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
麻子さんは、少し考えると、
「まぁ……島原先生には気の毒だけど。私、実は島原先生派だったのよねぇ」
と言った。
「島原先生派?」
病院内の派閥か何かだろうか。うちの病院はあまり聞かないが、他の病院はその手のことは多いと聞く。
「ううん、何でもない」
麻子さんが笑うと、私の後ろの方に目をやり、手を振った。「噂をすれば、島原先生だわ」
島原先生はこちらに気づくと、トレーをもって、麻子さんの隣に座る。
島原先生は私を見て、いつもみたいににこりと笑うと口を開いた。
「果歩ちゃん、髪切ったんだね。かわいい」
「あ、ありがとうございます」
島原先生に当たり前のようにそういうことを言われて、思わずドキリとして慌てる。
すると島原先生は目を細めて、楽しそうに笑っていた。