10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
22章:初めてのデート
金曜の夜、バスルームで一緒に湯船に浸りながら、先生は後ろから私を抱きしめた形で私の髪にキスをした。
先ほど『普通の夫婦はお風呂ももちろん一緒に入る』と衝撃的な事実を聞いたばかりで、でも恥ずかしいから先生がこっち見ないならいい、となんとか言ってはみたが、バスタブの中でこんなに密着して後ろから抱きしめられる状態を考えていたわけではない。
さっきから先生の裸の胸板がやけに背中に当たって、落ち着かないのだ。
「果歩、明日どこ行くか決めた?」
「プラネタリウムがいいです」
「……そうだね」
先生の声が少し曇ったような気がして、私が「だめですか?」と振り向くと、先生はそのまま深いキスをする。
「んんっ……」
「ううん、もちろんいいよ。行こう」
そう言って、また後ろから抱きしめられるように全身触られ、首筋にキスを落とされる。
「大和さん、だめ。のぼせちゃうっ……」
「うん、続きはベッドでしようか」
思わず、まだするんですか……! と泣きそうになったところで、バスルームの外にあった先生のスマホにオンコールがあって、私は少しほっとしていた。