10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
そして安心して手を繋いだままプラネタリウムに入り、歩いていると、あることに気づく。
やけに周りに注目されているのだ。
私はプラネタリウムの席に座ると、隣に座った大和先生の横顔をじっと見ていた。
(そういえば大和先生の顔って、和世さんに似て、美女、いや美男子だった……。それに最近病院長みたいに雰囲気もやわらかくなったから、実は最強?)
これまで大抵が怖い態度だったから、大和先生がモテるなんて想像できなかったけど、よく考えたら絶対に今の大和先生はモテると思う。
実際、今日もこれだけ注目されているのに……。
私がいつの間にか唇を噛んで大和先生を見ていると、大和先生が不意にこちらを向いた。
「ん?」
「な、なんでこっち見るんですか」
「果歩こそ。さっきまでずっと見てなかった?」
(なんでわかるんですか……!)
大和先生に隠しごとの類は無理だ。
そんな時、大和先生は私の手をまた強く握り、私に耳打ちする。
「暗がりにいるとわるいことしたくなるね」
「変なことしちゃ、だめですよ」
「変なことって?」
大和先生に言われて、顔が熱くなる。
この一週間でずいぶんいろんなことを知った気がする。今となっては『変なこと』というだけで10通りくらいはいろんな想像ができてしまうのだ。
「し、しりません! ……んっ」
言った途端真っ暗になり、そっとキスをされた。
「なっ……」
「これくらいはさせてね」
先生がクスリと笑う。
私は顔が赤くなっていそうなのが、暗くなったプラネタリウムでわかりにくいことにほっとしていた。