10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
私は次の日、ぼんやり仕事をしてしまっていた。
あの夢は本当にあったことだ。
今になって思い出した理由もよくわからないけど、確かに、あったことなのだ。
「果歩ちゃん?」
声が聞こえて見上げると島原先生だった。
「……」
「病院長のスケジュールで抑えてほしいとこがあって……どうしたの、果歩ちゃん?」
「島原先生」
私はまっすぐに島原先生を見ていた。
「私、昔、島原先生にプラネタリウムに連れて行ってもらったことがありますよね……?」
―――私、あの男の人が、島原先生だったような気がしたんだ。