10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
27章:ブレイクタイム

 病院長がそのあとやっと帰ってきて、3人は病院長室に入ったので、その話はそこで途切れた。

 心頭滅却したくて猛烈に経費の打ち込みをしていると、思った以上に業務が早く終わってしまって頭を抱える。

 するとまた、さっきの島原先生の告白が頭をめぐるのだ。

(こういうとき、どうしたらいいの⁉)

 思い出してみたら、少女漫画で主人公のことが好きな他の男の子が出てきたことがある。

(ああいうとき、どうしてたんだろう……?)

 真剣に細かい内容を思い出してみると、結局その子は、主人公に告白していない。しかも学生で、主人公とはクラスが離れてた。もちろん主人公は結婚なんてしてないし、相手も『好きな子ほどいじめたくなる』とかじゃなくて優しかった!

(全然パターンが違うからわからないじゃん!)

 泣きそうになって、部屋をうろつく。

 意味もなく棚に並べられた病院長の医学書を見ていった。『解剖学』『精神神経学』『内科学』『腫瘍』『心身医学』『救命』『精神医学』……なんとなく一冊を手に取ってみたけど、もちろんこういうときの対処法など書かれていない。

 太い本の中にはたくさんの情報があるはずなのに、なぜこういう答えはどこにも書いてないんだろうと不思議になった。
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