10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
28章:嫉妬
私は玄関ドアの前で佇んでいた。
ここから中を覗こうとしてみても、家に誰かいるかどうかすら分からない。
「まだ帰っては、ないよね?」
つぶやいてドアの取っ手に手をかける。でも、いないということが確実ではないことに気づいて、また手を離す。
「どんな顔すればいいのよぉ……?」
あれから医師が通りそうなところはできるだけ避けてコソコソ帰って、もちろん二人と顔を合わせていない。
つまり、あれから初めて顔を合わせるわけだ。
(逃げ場もないわけだし……)
考えてみれば、最初ここに来た時は、色々バレてしまって沈められるかもしれない……! と怖がっていたけど、今は違う意味で怖い。
どうしていいのかわからないし、大和先生の反応も怖い……。
でも病院長と話して明確になったこともある。
ーーー私は大和先生が好きだ。
そこは今もずっと変わらないでいる。
でも、それなら、なんで怖いって思うのかというと……そこがよくわからない。