10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~

「……怒ってはないけど、嫉妬はした」
「嫉妬?」

 嫉妬って、どういう気持ちを言うものなのか、私にはわかるようでまだよくわかってない。
 でも、先生の様子からそれが『いい気持ち』でないことはよくわかる。

「うん。今もしてる」
「ふぇ……ご、ごめんなさい」

 思わずまた泣いてしまうと、先生はその涙を指で拭って、その指を自分で舐めとった。

「違うよ。俺が……おかしくなるほど果歩のことが好きすぎるだけ」

 そう言われて、次は、胸がズキンと痛くなる。
 嬉しい。けど、本当だろうか、とその言葉に不安にもなる。


 だって先生は、さっきから私と違って取り乱しもせずに淡々と話してるし、私をじっと見てる。
 私はずっと取り乱して、目も合わせられずに、ただ泣いてるだけなのに……。


 その時……ふと、さっき怖いって思ってた自分の気持ちの真意がわかった気がした。

―――私、大和先生に背を向けられるのが……嫌われるのが怖いんだ。
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