10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~

 私は目線を下に向けて、大和先生の腕を掴む。
 腕を掴んだ手が震えたのが自分でもわかった。

「……好きなら、キスして」
「うーん……」

 先生は悩んで、でも最後には「だめ」とはっきり言う。

「な、なんでぇ……!」

 我ながら情けない声が出た。

(大和先生のその意地悪は、今の私には耐えられそうにない……)
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