10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
そう思ってリビングまで行くと、先生がキッチンに立っていて心底驚いた。
「や、大和さん! か、帰ってきたなら起こしてくださいよ」
「あ、おはよう。よく寝てたから起こせなかった」
先生はそう言って笑いながらフライパンを出す。
「おなか減ってるでしょ? 今日、俺が作るから」
「大和さん、作れるんですね……」
「これでも一応一人暮らし長いからね。ほとんど医局でパンとかだったけど」
「へぇ……。あ、手伝います。その方が早くできるし。オンコールあると食べられなかったら困るでしょう?」
「ありがとう。でも、簡単だしすぐできるから大丈夫。それに、まだ無理しないで。身体、まだ疲れてるでしょ」
そう言われて顔が赤くなる。
誰のせいだ! と批判したいけど、元をただせば私のせいだ、と言うこともできる状況なので口を噤むしかなくなった。