10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
食事が終わっても、オンコールはまだ鳴らなかった。
二人で食器を洗うと、私は大和先生に、お礼にコーヒー淹れますよ、と言う。
「それより先に。果歩、おいで」
先生はそう言って、私をソファに連れて行くとそこに座らせる。
首を傾げると、先生は「身体、診るよ」と言った。
(そういえば、朝、そんなこと言ってましたね!)
「あれ、本気だったんですか!」
「うん。なんで嘘だと思ったの」
「……だ、だってぇ……」
それが普通かどうかもわからないけど、先生に診察されるのって、すっごい恥ずかしいんですけど……。しかも昨日のせいで、って。
私は慌てて手を胸の前で横に振る。
「や、やっぱり、そんなのいいですって! 恥ずかしいし!」
「だめ。ほんと昨日は加減ができなかったから。ほら、腕も……ちょっと赤くなってるね」
先生は私の手を取って言う。
目を向けると、全く気付いてなかったけど、手首が赤くなっていた。