10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~

 私は次の日の夕方、病院内で島原先生を探していた。
 病棟内では見つからなくて、もしかしたら……と思って、病院裏まで走る。

 すると、見慣れた背中の男の人がそこにいた。

「島原先生」

 私が声をかけると、島原先生は振り返って私を見ると、困ったように笑う。

「見つかっちゃったか」
「猫、ですか?」

 あの時と同じ、病棟の建物と建物の隙間。そこに猫がいる。「呼びましょうか?」

 島原先生は少し悩んで、よろしく、と言った。
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