10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
何分、そうしていただろう。
「果歩ちゃん、謝らないで。別にキミに謝ってほしいわけじゃないから」
思っていたより穏やかな島原先生の声が降ってくる。私は顔を上げた。
「……でも」
「あのね、僕はあの時はっきり言えて、なんだかすっきりしたの。『あの』大和も驚かすことができたし」
ふふ、と楽しそうに島原先生が笑う。「まぁ、でも、隙があればあわよくば、とは思ってたけどね」
その言葉に、何と返事していいのか悩んでいると、先生はまた楽しそうに笑う。
(あぁ、これがいじめっ子たるゆえんだ……)