10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
私が黙りこくると、
「果歩ちゃんの知りたいことを、全部知ることのできる方法が一つだけある」
島原先生は私の目の前に一本の指を出した。
「大和に暗示をかけて、聞きたいこと全部、聞くんだよ」
「……それは」
暗示をかけられるかどうかと一緒に、いろいろ知りたいことを聞ける機会でもあるわけだ。
でも、そんなこと、したいって思わない。もし聞くなら、暗示じゃなくてきちんと聞きたい。
「まぁとにかくね、大和が果歩ちゃんになにか隠し事してるうちは夫婦としては弱いし、付け入る『隙』もまだあるって思っちゃうんだよ。少なくとも僕はね」
島原先生はいたずらっぽく笑う。私はその言葉に、泣きそうになった。