10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
「大和先生、何をおっしゃっているんですか?」
「結婚しようって言ってるだけだけど」
(まさか、さっきのお願いが効いてるの……? でもなんで相手が私……!)
「せ、先生! とりあえず、正気に戻ってください」
「俺には果歩の方が正気じゃないように見えるけど?」
「それはっ……ひゃっ!」
急に、大和先生が私の肩を抱く。驚いて首まで真っ赤になったのが自分でもわかったが、歩道を歩く人とぶつかりそうになったのを避けてくれたらしいことが分かって息を吐く。
大和先生は、気にする様子もなく、そのまま
「ちょっと寄りたいところがあるんだけど、まだ時間いい?」
「寄りたいって……どういう……」
私が聞くより先、先生は微笑み、タクシーを止めると、私の手を取って私をタクシーに押し込んだ。