10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
やってきたのは中学生くらいの大和さん。大和さんは以前からでは考えられないほど、さわやかな笑顔の持ち主だった。
そして、その日の大和さんは、手にたくさんの袋を持っていた。今なら、それが明らかにチョコレートの箱やパッケージで、その日はバレンタインだったのだろうと分かる。間違いなく、大和さんはモテていた。
(って言うか私、『大和くん』って呼んでたんだ。10も年上なのに……怖いもの知らずだ……)
大和さんは微笑みながら、少し困ったように「遅くなってごめんね」と言う。
「なに持ってるの」
「え? あぁ、帰るとき渡されて……」
「ふうん。女の子でしょ」
「……鋭い」
大和さんが言って笑うと、私はますます頬を膨らませる。