10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
次の瞬間、大和先生は私の身体を抱きしめる。
そして少し身体を離すと、私をまっすぐ見て言った。
「歩さんが亡くなった時、果歩、泣いて泣いて……1週間もひどい熱出て、それがまたすぐに原因が分からなくてさ……入院したんだよ。覚えてない?」
「いや……全然覚えてないです」
「ならよかった。あの時、果歩ずっと苦しそうで、本当に果歩まで死んじゃうんじゃないかって、子ども心に怖かったから」
大和さんは泣きそうな顔で笑う。それを見て、私はそれほどこの人を心配させたのだと知った。