10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
34章:俺と彼女の物語①(side 大和)
お葬式は友果さんが気丈に何とか行った。
俺はショックが大きくて、どうやって歩さんの葬儀を乗り切ったのか全く覚えていない。とにかく、あんなに泣いたことのないくらい泣いた。
最終的に俺が泣き止んだのは、俺以上に果歩が泣いて、泣いて、狂ったように泣き続けていたからだ。それは周りの誰もが心配になるくらいだった。
それから果歩が熱を出して、それも原因不明の熱。
知恵熱に似たものだろうと思われていたけど、それから果歩は食事も水も取らなくなって、入院することになった。
何本も点滴のついた小さな腕。でもその薬のどれも、彼女の状態を一つも良くすることはできなかった。
「大和くん?」
それでも俺が行くと、少しだけ目を開けて、掠れた声で俺を呼ぶ。
(もしかしてこの子は、歩さんのとこに行こうと思ってるんじゃないか)
そんなことが頭によぎったが頭を振ってその考えを掻き消す。