10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
すると、次の瞬間、するりと果歩が島原の方に歩き出す。
そして、島原の手を取った。
「あっさり懐くのかよ」
「あはは、僕、小動物には懐かれるからねぇ」
島原はそう言って笑う。
果歩は、動物扱いか。まぁ、わからないでもない。どうして小さな子どもって、こんなに動物みたいな動きをするんだろう。
(それにしても……)
考えていると、島原は苦笑して、
「腑に落ちないって顔してるな」
と笑う。
「……今になって、ちょっと歩さんの気持ちが分かったわ」
「なにそれ」
―――果歩はお前に夢中だよ。ちくしょう。
あの時の歩さんの声が脳裏をよぎっていた。
たしかに、ちくしょう、だな。そう思って笑っていた。