10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
「この前、果歩ちゃんに告白しようと思ってうちの前で待ってた子。なんて言ったけ、高橋君? あの子、二人で取り囲んだってホント?」
思わず父親と目が合う。父はしぶしぶ口を開いた。
「あ、あれはほんとに好きかどうか確かめただけで」
「いや、そもそもあんな男に果歩とつきあう権利なんてないでしょ」
「こんな熊みたいな顔面のオジサンと、熊みたいな性格の怖い男に囲まれたら、好きでい続けられる高校生なんて、いないでしょうよ。そこのところ、わかってんの? 果歩ちゃん、一生独身でいさせるつもり?」
「でも、果歩ちゃんの相手は私が納得できる相手でないと」
「俺も」
「だれよ、それ」
呆れたように母が言う。
「言っとくけど、大和でもないからな。お前にも渡さない!」
「ちょ、俺の父親はどこいったんだ!」
とまぁ、ふざけていながら、こんな具合で我が家の『中』は平和だった。