10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
5章:進む話、埋まる外堀
「あれから何もなかったの?」
次の日の朝、島原先生に声をかけられた私は、悲壮な顔をして島原先生を振り返った。「どうしたの、ものすっごい悲壮な顔で、足まで震えてるけど……!」
「一緒に実家に挨拶に行かされて……」
「はぁ?」
「し、しかも帰りに、おでこにチュッてされて……。誰アレ、ナニアレ……」
そう、昨日の夜、連れていかれた先は成井家だった。
大和先生の勝手な結婚報告に、なぜか大喜びの病院長と和世さん。さらに、三人で話を進める成井家。
何度か否定したけどまったく聞き入れてもらえなかった。
(なんで……? 成井家、どうした……?)
しかも極め付けは、私のアパートまで私を送り届けた大和先生に、額にキスまで落とされたのだった……。