10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~

 三人だと聞いていってみれば、もう一人その場にいた。
 確か、これからうちに転職してくる看護師の花菱麻子だ。男女2:2の、明らかに合コンの様相だった。

 会の途中、何故か島原が果歩に聞く。

「果歩ちゃんあれだよね。今まで、彼氏とかいたことないの?」
「ぶぅっ! と、と、突然なんて質問を……!」

 果歩が慌てて叫ぶ。思わず果歩の様子をじっと見てしまった。
 ずっと様子は気にしてたし、いらない虫は気づかれないようにさっさと追っ払っていたから、ないとは分かっているが、本人から聞いたことはない。

 島原はなおも聞く。

「えぇ、いいじゃん。せっかくプライベートで飲みにきてるんだしさ。はい、これ飲んで」
「へ? あ、はい」

 果歩はすでに三杯目だ。大丈夫だろうか。送り届けるとしてもそこから先何もしないでいられる自信もない。そんなことまで考えていた。

「かわいいから、告白されたことくらいあるでしょ」
と花菱さん。

 果歩は頬を膨らませると言う。

「あ、あるはずないですよ。全然モテないし」
「モテない、ねぇ」

 そう呟いて、島原は苦笑してこっちを見る。

 果歩は、モテないことはない。というかモテる。
 これまでどれだけ排除してきたか……両手の指では足りないのは確かだ。
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