10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~

 それからすぐ、私たちは二人でそろって、成井家に報告に行っていた。

「おめでとう!」

 病院長も和世さんも、その報告に喜んで手を取り合う。

「あ、ありがとうございます」
「よかった。ホントに……よかった……」

 そう言って先に泣いたのは和世さんで、続いて病院長まで泣いてしまったから、私は慌ててハンカチを取り出す。
 しかし一枚だったので固まっていると、大和さんが微笑んで自分のものを病院長に差し出した。

 そして二人は、おんおん、と長らく泣いていた。
 それを見ていると、こちらもこみ上げるものがある。

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