10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~

「そ、そんなに泣かないでくださいよぅ……私まで泣けてきてしまいます……」

「ごめんね」
「すまない」
 二人は、申し訳なさそうに泣き止むと涙を拭いた。

 そんな二人の姿を見ていて、私は自然と口が開いていた。


「お父さん、お母さん……。これまで色々お世話になりました。でも、この子も一緒にまた、お父さんとお母さんにお世話になりたいです。これからも、よろしくお願いします」


 言い終わると、私はなんだか胸のつかえがとれていた。
 二人は驚いた顔をした後、また涙を流す。

「もちろんだよ……うぅっ……」

 結局私まで泣いて、一枚のハンカチでは足りなくなったけど、お父さんもお母さんも泣き止んだ後は、これまでを懐かしむように私の小さな頃の話や、大和さんの小さな頃の話をしてくれた。

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