10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
8章:祈り
ぼーっとする。なんだろう。
―――でも、もっとしたい。
「果歩……!」
突然大きな声が聞こえて、気付いたら、先生が私の両肩をもって止めていた。
あれ? 私さっき……。
先生は私から目をそらして、
「これ以上はちょっと……。俺の方がいろいろまずいから」
と困ったように言う。
私はその様子に、ハッと我に返って、自分の口を手でふさいだ。
「私……なにやって……! ご、ごめんなさい! ごめんなさい!」
(私、犯罪に犯罪を重ねている……!)
さっき間違いなく、『キスをして』と言って私が先生の目を見た。きっかり10秒。
先生は言われた通りに私にキスしたんだ……!
先生は慌てたように私の手を掴むと、
「落ち着いて、果歩」
「でも……!」
(あぁ、もう何やってるんだぁあああああ!)