10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
罪悪感と混乱と情けなさと恥ずかしさとが混じって、涙がこぼれる。
「先生、ごめんなさいっ……!」
そんな私を先生は優しく抱きしめた。途端、私は息を吸うのを忘れていたことに気付いて、息をすぅっと吸う。
先生はそんな私の背をポンポンと軽く叩くと、優しい声を出した。
「果歩は何も悪くないよ」
そんなに優しくしないで……泣けてくるから。また涙がボロボロと流れる。
先生は私を抱きしめる腕に少し力を込めた。そして低い声で言う。
「大丈夫だから。全部、俺が焦ったせい」
「先生……?」
先生は私をそっと離して……私の目の前で困ったように笑った。
その顔を見て、私の胸はまたドキドキとする。
(どうしよう、先生の顔見たら、ドキドキして止まらない……)