10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
9章:プロポーズ

 朝、病院長室で書類の整理をしていると、回診から戻ってきた病院長が私を見て、
「ご機嫌だねぇ」
と笑った。
 思わず、ぱ、と頬を隠す。

「え? そうですか?」
「うん」

 あれから、毎日のように大和先生とキスをしている。そのたび、大和先生のことが好きになってきている自分に気づく。
 恋をするってよくわからなかったけど、今、自分は恋をしているのだ。

 それなら、大和先生の暗示が解けるまで、こうしていたい。
 ずるいけど……そんな風に思うようになっていた。

 病院長はまっすぐ私を見ると、

「明日、大和も果歩ちゃんも仕事お休みでしょ。うちに来てくれるかなぁ?」
と言う。

「あ、はい。もちろん」
「うん。よかった。和世も喜ぶよ」

 和世さんは確かに大和先生が来たら喜びそうだ。
 そんなきっかけになれることすら、私には嬉しい事だった。
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