10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~

 頭が真っ白になる私をまっすぐ見て、病院長は続ける。

「うちの外科の日向先生にオペを頼んでる。大丈夫だから、あまり驚かせたくなかったんだけど……。さすがに予定とか隠せないからね」

 病院長はゆっくり優しく笑った。

「あ、早く見つかったんだよ。ほら、うちはがん家系なのは分かってるし、普段から気をつけて検診とか受けてたんだ」
「……」
「だからそんな顔、しないで」

 私は今、どんな顔をしているんだろう。いつの間にか自分の手をぎゅうっと強くにぎっていた。
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