10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
「私近くにいたのに全然気づかなくて……」
強く握られた私の手を大和先生が上から優しく包み込む。
そんなことされれば、その暖かさに、ふいに泣きそうになった。
「いや、私が隠してた。そうしてもらったんだ。果歩ちゃんの本当のお父さんが肺がんで亡くなったでしょ。……本当にごめんね」
「なんで病院長が謝るんですか」
私の父も同じ病気だった。
一か八かでなんとか手術をしてみたけど、すでにがんは転移・進行し、どうにもならない段階まで来ていたと後で聞いた。