10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~

 私はじっと考えていた。
 そして、少し先生の身体から離れると、まっすぐ先生の顔を見る。

「果歩、どうしたの?」
「先生、あの」
「果歩。家だから名前で」
「や、大和さん。私、悪い子です……」

 先生はわかっていないように、目を細めて、「大丈夫だって」と言う。

 私はその言葉に首を横に振った。

「違うんです。先生は……分かってないだけで」
「……どういうこと?」

「でも、私、悪い子のままでいたい」

 私は決意して、きゅ、と自分の唇を噛んだ。
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