10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
10章:もっと教えて
ちゅ、ちゅ、と何度もキスをされて、それに応えていると、大和先生は私の背に手を回して、それを続けた。
その手の熱さに、キスに、脳が蕩けそうになる。
一瞬、唇が離れて、大和先生は少し困ったように笑った。
「イヤな時はイヤだって言うんだよ」
「イヤじゃない。大和さんのすることでイヤだって思ったこともないです」
「あのね……さすがに無自覚に煽りすぎ」
先生はまた私にキスをして、それから額を合わせると私の目を見た。
「まだ父さんのことで不安もあるだろうけど、結婚するって決まったし、今日は……少し先に進んでいい?」
「先、って……今までと違うんですか? まだキスの先があるの?」
これ以上の気持ちよさはないと、そう考えていたのに。
何がこの先にあるんだろう。そんなの少女漫画で見たことない。
私が首を傾げていると、大和先生は苦笑して言う。
「果歩はキスがゴールみたいに思ってるけど、大人の男女にとってキスはスタートみたいなもの。まだ先がある」
「そ、そうなんですね……」
「そもそもキスだって嫌いな人とは、生理的に無理なんだよ。細胞が、全部が、本能的にお互いにぴったり合ってるんだと思う」
私はその言葉に、思わず目を輝かせる。
暗示でだって、先生に本能は残っていて、先生と本能的に合ってるのなら嬉しい。