10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~

「本能的?」
「うん、だから果歩が気持ちいいと思ってくれて、俺も嬉しかった」
「へへ……」

 私も、と呟いた時、先生は目を細めて私の髪を撫でる。

「だから、俺は果歩がよければ、もう少し……先に進みたいと思ってるんだ。子どものことも少しずつ考えられるように」
「……はい」

(子ども……)

 そんなこと、今までは想像すらできなくて、そもそも、もともと興味も全然なくて……保健体育の授業すら曖昧に聞いていた。
 だけど不思議なことに今は、もう少し勉強しておけばよかったと後悔するほどには、興味を持ち始めている。

 先生はそんな私を知ってか知らずか、私の頬をするりと撫でた。

「果歩、イヤなら止めて」
「は、はい」

 少し緊張気味に答えた私に、先生は苦笑して、からかうように言う。

「そうだ。無理な時は手、挙げて。絶対、なんとかして止めるから」
「それ、歯医者さんのやつじゃないですか」
「あはは」

 そんな話をしていたら、少しだけ緊張感が和らいで、そんな私に先生は、ゆっくりキスを落とした。
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