10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
いつもと同じキス。
「んっ……」
(やっぱり、気持ちいい)
そう思って目を閉じると、先生が少し唇を離して、
「果歩。口、あけて」
「ふぇっ……く、口?」
そう言われて、私はよくわからないながらも、キスの時、ぎゅっと閉じていた口をゆっくり開く。まるで本当に歯医者さんだ。
そう思ったとき、先生は目を細めて、
「ん、上手」
と笑ったかと思うと、またキスをして、次の瞬間、口内にぬるりとしたものが入ってきた。
「んんっ……!」
それが先生の舌だと気づいたときには、一瞬パニックになりそうだったけど、先生は、大丈夫だというように、私の背中を撫でる。
ぴちゃ、という水音が耳の奥の奥に響いた。
息継ぎが下手な私のために少し唇を離しては、またキスをして、何度も口内を先生の舌が這いまわると、次第に全部奪うように舐めとっていく。
「ん……」