10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
11章:入籍と手術当日

 10秒見つめるより先、先生がはっきりと「だめ」と言った。

「ふぇっ?」

 思わぬ返事に私は戸惑う。

(だって前は全部自分に聞けって……)

 そう思ったのが分かったのか、先生はなだめるように私の頭を撫でると口を開いた。

「今日は果歩、色々あって正気じゃないから」
「そ、そんなことないですっ」
「正気だと思ってる時が一番危ない、だっけ?」

 以前、私が大和先生に言ったことをそのままからかうように言われて、私は思わず言葉に詰まる。私もずるいけど、先生も少しずるいと思う。
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