10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
「転移も見当たらずで、うまく全部切除できたし。ひとまず安心だね」
「本当によかった」
「あぁ」
病室で、麻酔で眠る顔色の良い病院長を見て、またほっとして、その部屋に和世さんを残して私たちは部屋を出た。
出た途端急に、大和先生は私の身体を後ろから抱きしめる。強く。
「手術もうまくいったし、入籍もしたし……これで安心して俺たちのこれからのことも考えられるね」
「ふぇっ……せ、先生!」
なにより、そこが病院の廊下だったので私は慌てた。今まで大和先生はこんな公の場でこんなことすることなかったのに。
(こんなとこ見られたらっ……!)
そう思って身をよじるのだけど、先生は全く感じていないように、私を抱きしめたまま「なに?」と聞く。