10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~

「いや、あの、ここ病院で……」
「うん。俺たちは夫婦なんだよ? 手術が成功してほっとして、こうしていても変じゃない。それに今は勤務中じゃないし」
「で、でも……」
「何か問題?」
「い、いえ……」

 心底驚いたけど、そうされていると、手術を待つ間ずっと緊張して力の入っていた肩から、すっと力が抜けるのを感じた。
 それが分かったのか、先生は後ろから抱きしめたまま私の腕をさする。

 そのしぐさに次はやけにドキリとして、気持ちいいとさえ思った。

(今、手術終わったばっかりで……私はなんて不埒な……!)
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