10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
思わず身をひるがえして、先生の腕の中から逃れる。
「あ、わ、私……病院長の着替えとか持ってくるんで……!」
「そっか。俺は日向先生と少し話もあるけど……」
「ここにいてください。和世さんも心配だし」
私が言うと、大和先生は少し考えて頷く。
「そうだな。でも、果歩が戻ってきたら一緒に帰ろう」
「はい」
私が頷くと、先生は私の頭を子どもにするように撫でて、いい子だ、と笑った。