10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
12章:不安と決意とすぐの後悔

ーーーほっとした途端に変な気分に……! 腕触られて気持ちいいってなんだ!

 私は泣きそうになりながら、タクシーで成井家まで行き成井家に入っていた。

 そして、あまり踏み入れたことのない病院長の部屋に入る。

 そこは整えられていて、病院長の匂いがする……優しい部屋だと思った。そこでやっと気持ちが落ち着く。

 そしてふと目をやると、机の上に写真を見つけた。

 高校の入学式の時の私や、小学生の頃の大和先生。和世さんと2人で撮った若い頃の写真。
 それを見て思わず、ふふ、と笑う。

 そしてもう一枚。幼い日の私と中学生くらいの男の子が、とても仲良さそうに写っていた。

 その中にいたのは以前見た夢と同じ男の子。やっぱり、これ、大和先生だ……。

 私は、大和先生にすごく懐いていた。写真の私はお母さんにしていたように、中学生の大和先生の足にしがみついていたのだ。

(ところで、どうやってこんなに仲良くなったんだろう? そんなに会ってた記憶もないのに)

 そう思ってから、私は時間が思ったより進んでいることに気づいて、慌てて箪笥の引き出しから、パジャマと服、下着などを5日分取り出す。

「これでいいかな」

 古いものは、帰りにクリーニングに出してくれと言われていたので、そうしようと思いながら、新しい服をカバンに詰めようとする。
 病院長の服を持っていると、思わずそれに顔を埋めてつぶやいていた。

「本当によかった……お父さん」
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