10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
決意した私の目に、中学・高校の頃の教科書が目に入る。懐かしいな、と見ると、ふと保健体育の教科書が目に入った。
「ちゃんと読んでなかったなぁ。そういえばテストも散々だったもん。だめな学生だ」
そう呟いて少し考えると、私はそれを自分のカバンの中に押し込んだ。「ね、念のため、持って帰ろう」
使うのか使わないのかわからないけど……以前よりは興味を持っているし、これからきっと子どもだって考えるかもしれない。
ーーーだから……。
私はくるりと踵を返すと、そのまま成井家を出た。