10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
家に帰った瞬間、大和先生は私を抱きしめ、そのままキスを落とす。
ちゅ、と予想外に軽いキスに私は先生の顔を見た。
(今、私、物足りないって思った……)
驚いた。そんなこと思った自分に。
先生はクスリと笑うと、私の頬を撫で、
「果歩、どうしたの?」
と意地悪な笑みを浮かべて聞く。
「いや……なんでもないです」
「足りない?」
そう言われて、私は慌てて、ちがいますっと言ったけど、先生はわかっているように楽しそうに笑う。
「前に教えたキス。今日は果歩がやってみて」
「わ、私?」
「うん。できるよね?」
先生はまっすぐ私の目を見て言う。
私は思わず、こくん、と頷いていた。