10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~

 私は、うーん、と考える。確かに『好きな人』がいれば、そうかもしれない。

「そもそも恋愛として好きな人っていないです」
「大和は?」

 そう言われて、一瞬どきりとした。

「へ?」
「顔、好きなんでしょ」
「顔は好きですけど……中身、アレですよ。時々、屋上から下見てるけど、たぶん心の中で『人がゴミみたいだ』とか思ってるんですよ。世の中全部敵ですよ。下手に逆らったら、勝手に臓器提供させられちゃいますよ」
「なんちゅうイメージ持ってんの」

 そう苦笑されて、私は自分の顎に手を当てる。

「まぁ、正直、好きになってほしいですよ。このまま嫌われたままでいたくないです。兄妹が仲いい漫画とか映画とか見たら……やっぱり、すっごい憧れちゃいます。私ごときは何もできないけど、大和先生が困ったら助けてあげたいと思うし、大和先生には幸せになってほしいとも思ってます」
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