10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
そのまま先生に手を引かれ、先生は先にリビングのソファに腰を下ろす。そして、ほら、と笑った。
私は先生の顔をまっすぐ見て、ゆっくりと先生の唇に自分のそれをつける。そして、おずおずと自分の舌を先生の舌に絡ませた。
ぴちゃ、と音が聞こえて、なんだか急に自分のしたことが恥ずかしくなる。唇を離そうとしたけど、先生はゆるさないとでも言うように、私の頭の後ろをもって、そのまま先生から舌を私の口内に這わせる。
(苦しい……でも、やっぱり気持ちいい……)
意識がトロンとして目を瞑ろうとしたとき、先生の唇が離れて、そのまま私の首筋にキスを落とす。
ジクリ、とした感触がして、私は驚いて先生の顔を見た。
「やっ、な、なに?」
「夫婦だからね。これは果歩が俺のものってシルシ」
先ほど変な感触のした首筋に先生は指を這わせる。
その指の感覚に、ゾクリと背中に電気みたいなものが走って思わず目を瞑る。