10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~

 思わず眉を寄せて先生を見つめると、先生は軽いキスを私に落とした。

「んっ……」

 そして唇を離して、困ったように私をもう一度見ると、私を抱きしめて続ける。

「でもね、無理って言われても、俺は果歩の全部見たいよ? 俺が暴走しても責任きちんと取れるように入籍もしたし」
「……やだっ、やだぁああああ!」

 私が泣いて、先生の身体を離そうと手を伸ばしたにもかかわらず、先生は私を離してくれない。むしろ、そうすればするほど、先生の力は今までにないほど強くなった。

 そしてそのまま先生は私の耳元にキスを落とす。そうされれば、くすぐったさと変な感覚がして、私は力が抜けてしまった。

 それを見た先生は満足そうに笑うと言う。

「果歩は俺の全部見たくない?」
「み、見たくないですっ! そんなの見たがるの変態だけです!」
「変態って……」
「先生はおかしいですっ!」

(おかしい、絶対におかしい! だって、裸なんてなにも関係ないじゃん!)

 人に裸を見せるなんて……修学旅行の女風呂くらいだ。
 女の子同士でもちょっと恥ずかしくてタオルを巻いてしまっていたのに。水着も恥ずかしいから、上にいつもラッシュガード着ていたし……。

(女の子にも見せないそれを先生に見せろって言うの⁉)
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