10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
島原の考えていることだけは良く読めない。大和はそう思っていた。ただし、『最近までは』……だ。
「珍しく落ち込まないでよ。引いた僕の身にもなってね?」
今まであいまいにしていたことを、島原はまたシレリとした様子ではっきりと大和に告げる。大和はまっすぐ島原を見た。
「分かって焦ったくせに」
島原は目を細めてさらに加える。その言葉に大和は少し考えた。
確かに焦ったのは大和だった。島原が本気で来たら、と不安になったのだ。
「すまない」
珍しく頭を下げた大和に、島原は苦笑する。
たぶん大和は今も、あの子のためなら、何でもするんだろうなと思って……。