10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
島原は自分もコーヒーを買うと、大和の横に腰を下ろす。
そしてそれを一口飲むと口を開いた。
「ところでさ、『あれ』教えたの、大和じゃないの?」
大和は驚いた顔で島原を見る。島原はいつも通りの食えない笑顔で笑っていた。
「……嫌いなの、そういうとこだよ。まぁ、……あれは俺じゃない」
「そうなんだ、意外」
島原は心底楽しそうに笑うと続ける。「もともと自信過剰なんだから、その有り余る自信をしっかり持って、当たって砕けろよ。砕けたら骨くらいは拾ってやる」
「お前ね」
「今度奢れ。堺屋のフグがいいな」
この界隈で一番高いフグ料亭の名前を挙げて、島原は微笑む。大和も思わず笑って、頷いた。
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