10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
「果歩、何してるの?」
「ふぁっ……!」
いつの間にか帰ってきていた大和先生の声に、私の身体は座っていたソファから10センチほど飛びあがった気がした。
慌てて手に持っていた本を、ソファの下にでも投げ込もうとしたけど、それより先、大和先生がその本をひょい、と取り上げてしまう。
そして、その本を一目見ると、先生は目を細めて私の方を見た。その仕草に、顔が真っ赤になって泣きそうになる。
「ふぇ……!」
立ち上がって逃げようとした私の腕を大和先生はパシリと掴んだ。
「ちょ、待って。なんで逃げるの?」
「ご、ごめんなさい! 念のため持って帰ってきてただけなんです!」
「それで、今気になったから読んでた? この中のどのあたり?」
そう言われてクスリと笑われると、また顔がカッと熱くなる。
(なんでよりによって、読んでるときに見つかるの……!)